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法人破産手続はどのような流れで進む?経営者が知っておくべき倒産の基本知識を解説

企業によって目指すところは違いますし、何をゴールとするのか、そしてどのような終わり方をするのかもわかりません。

そして破産は終わり方の1つであり、ネガティブな印象を持たれることが多いですが、その手続について知っておくことは大切です。特に経営者の方は様々な状況に対応できるよう法人破産についても知っておかなければなりません。必要に迫られたとしてもスムーズに手続が進められることで、関係者への影響も最小限に留めることができるのです。

そこでこの記事では、法人破産に関する基本的な手続の内容、その流れについて解説していきます。

 

STEP1:法人破産の下準備をする

法人破産は、債務超過・支払不能に陥った場合に採る手段です。そのためこの状態になることが、以下の手続を進める上での前提となります。しかし、支払不能といっても程度があります。同じ支払不能に変わりはなくても、換価できる財産が多いと、従業員への未払い賃金や債権者への弁済が割合多くできることになります。

そのため、法人破産への意識を向けるのはできるだけ早期であった方が良いです。実際に支払不能となる前の、支払不能のおそれが出てきた段階で準備をしておくようにしましょう。

 

そこで、法人破産に強い弁護士への相談から始めることが有効です。手続はスピーディかつ早期の着手が大事ですので、あらかじめ弁護士と話し合い、計画的に進めるように努めましょう。

弁護士に委任をすれば、経営者自身で対応しなければならない事務処理などは少なくできますし、各処理を的確に済ませられるようにもなります。契約関係の処理から債権者への受任通知なども弁護士がいることで効果を高められます。

 

その他申立てに先立って資料収集や財産保全を行うことになるでしょう。財産保全も重要な過程です。ただしこれは経営者の保身のために行うものではありません。企業の財産がそれ以上散逸しないようにするという意味であり、逆に、経営者だけが有利になるような財産処理をするとペナルティを科せられます。

 

STEP2:裁判所に申立てをする

準備が整えば、破産手続の申立てを裁判所にて行います。申立て先は、各地域を管轄する地方裁判所です。本社があるエリアを基準に考えましょう。

 

 

申立てに必要なものは、主に以下の書類です。

 

  • 破産手続開始申立書
  • 申立てに関する取締役会議事録または取締役の同意書
  • 会社代表者の陳述書
  • 債権者一覧表
  • 債務者一覧表
  • 債務者一覧表
  • 委任状

 

他にも法人登記全部事項証明書や、貸借対照表、損益計算書、不動産登記の全部事項証明書など、状況に応じて様々な書類が求められることもあります。

ただ、弁護士に依頼をしている場合にはこれら書類の収集も可能な範囲で任せられますし、申請手続も頼むことができます。

 

申請後、要件を満たしていれば「破産手続開始決定」を受けることになるのですが、申立て先の裁判所や破産の実情に応じて尋問が行われるケースがあります。代理人となる弁護士が裁判官と面接をすることもあれば、破産者自身と面接をすることもあります。その趣旨は、手続の要件を満たしているかどうかを審査することにあります。そのため気になる点がある場合には裁判官から質問を受けることになり、企業の方はそれに回答をしていかなくてはなりません。

一方で、事案がシンプルだと書類審査だけで済むこともあります。

 

STEP3:管財人による調査・処分が始まる

破産手続開始決定を受けると、裁判所は「破産管財人」を選任します。破産管財人は、企業の財産につき管理権を有し、財産の調査をしたり、財産が散逸しないようにしたりなど、管理を行います。また、財産の換価なども破産管財人が行うことになります。

逆に企業側はもはや自社の財産でも自由に扱うことは許されなくなります。

 

なお、法人破産に係る種々の手続は破産管財人がその任務として遂行することになり、この者に対する報酬として企業は「引継予納金」を納めなくてはなりません。この費用が法人破産における大きな割合を占めることとなるでしょう。金額は事案によって異なりますが、破産管財人の仕事量に応じて変動しますので、債権者数や債務額が大きく影響することになります

 

破産管財人は、状況を把握するために破産者・その代理人となる弁護士と打ち合わせも行います。債務の状況・原因、資産状況、契約関係などの質問を受けることになりますので、正直に回答していかなくてはなりません。

通常、破産手続開始決定を受けてすぐに行われます。特に法人の破産においては財産の散逸が起こりやすく、早急に打ち合わせをする必要性が高いためです。

 

STEP4:債権者集会と配当

「債権者集会」も法人破産における重要な過程の1つです。

その名の通り、債権者が集まり、企業は状況の報告をしなければなりません。破産管財人による調査結果や、換価処分をした内容・結果、また、なぜ破産せざるを得なくなったのか、といったことも説明することになります。

 

その後、破産管財人による換価処分を終えれば、配当に進みます。破産をするにしても完全に財産がゼロということはありませんので、満額の回収はできないものの、債権者はいくらかの配当が受けられる可能性もあります。

しかし、法律上、優先順位が決められていますので、一切の配当を受けられない者もでてくるかもしれません。基本的には税金関係から充当され、その後行政関連の保険料の支払い、そして雇用関係の債権といった順に配当がなされます。

 

特定の債権者にだけ先に弁済をするといった行為は違法ですので注意しましょう。債権者平等が原則です。

 

STEP5:手続の終結と法人の消滅

配当を終えれば裁判所に報告をし、破産手続が終結。その事実が官報公告として公表されるとともに、裁判所により破産手続廃止の登記がされ、法人登記が閉鎖されます。つまり、この時点で法人が消滅するのです。破産手続が終了した時点で法人が消滅するわけではありません。

 

なお、配当可能な財産があり、債権者への配当をして手続を完了させた場合には「終結」として終了することになります。

他方、換価しても債権者に配当するだけの金銭が得られない場合には「廃止」として手続が終了することになります。

 

さらに廃止にもいくつかのパターンがありますし、他にも破産手続全体を通して様々な過程があります。詳しくは弁護士に相談をして、自社の状況と照らし合わせた法人破産の流れを把握すると良いでしょう。

資格者紹介Staff

志田 一馨弁護士
志田 一馨Kazuyoshi shida

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  • 神奈川県弁護士会所属

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