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自己破産の条件とは? 破産手続や免責手続の条件をわかりやすく解説

債権者との交渉や裁判所の手続を利用することで、債務額の減額や期限に猶予を設けてもらえることがあります。

しかし到底返済ができないような状況に追い込まれた場合、最終的には「自己破産」を検討することになるでしょう。
ただし、自己破産も自由にできるものではありません。特定の条件を満たすこと、あるいは特定の事由に該当しないことが必要です。

 

そこで当記事では自己破産を検討する方に向けて、「自己破産の条件」をわかりやすく解説していきます。

 

自己破産をするには破産手続と免責手続が必要

自己破産をする場合、裁判所に申し立てて「破産手続」を進めていく必要があります。

破産手続は、債務者が支払不能であることを公示するとともに、財産の清算を始めたことを示すための手続です。

申立てが認められると「破産手続開始決定」を裁判所から受けることになりますが、同決定を受けただけで債務は消滅しません。

 

そこで、法律的に債務を消滅させるために「免責手続」も進める必要があります。

免責手続を経て裁判所から「免責許可決定」を受けることで、清算後に残った債務の支払い義務を免れることができるのです。

※法人が破産するときは破産手続により法人各そのものとともに債務も消滅するため、免責手続は不要。

 

以上を踏まえ、以下では①破産手続に関する条件と②免責手続に関する条件に分けて解説をしていきます。

 

破産手続に関する条件

破産手続の申立てを行い、破産手続開始決定を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。

 

  • 債務が支払不能な状態にあること
  • 申立て権限のある人が適切に手続を行うこと
  • 破産費用を予納すること
  • 不当な目的による申立てではないこと

 

それぞれの詳細を見ていきましょう。

 

債務が支払不能な状態にあること

自己破産に関する規定は破産法に置かれています。そして同法では「破産手続開始の原因」として、次の条件を提示しています。

 

(破産手続開始の原因)
第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

引用:e-Gov法令検索 破産法第15

 

つまり、破産手続を開始するには債務者が「支払不能にある」といえる必要があります。その上で、「支払いを停止したときは支払不能であると推定する」とあります。そこで申立人である債務者としては、支払不能であることを直接的に示すか、支払停止の状態を作り出すことが重要です。

 

同法でいう支払停止とは、「支払能力(※1)を欠いて、弁済期が到来した債務に関して、一般的・継続的に弁済ができない(※2)(※3)ことを外部に示す行為」を意味しています。

 

1「支払能力」:財産や信用、労務による収入をもって債務を返済する能力

2「一般的に弁済ができない」:総債務に対して債務者の資力が不足し、弁済ができない

3「継続的に弁済ができない」:一時的な資力不足ではないこと

 

ポイントは、支払能力がないこと、弁済ができないことを「外部に示す」ということです。

明示的に表明することまでは求められておらず、黙示的な表明でもかまいませんが、内部的な方針決定があっただけだと外部に示したとはいえません。

 

例えば「債務の返済ができなくなった」と債権者に直接通知することは明示的な表明にあたります。

これに対し、「廃業したこと」や「店舗を閉鎖したこと」などは黙示的な表明として認められることもあります。
一方で、債権者の一部に対して支払いをしなかっただけで黙示的な表明があったとまでは評価されにくいです。

 

申立て権限のある人が適切に手続を行うこと

破産手続の申立ては適式に行われなければなりません。

 

そして破産法では申立て権限に関して「債権者または債務者が破産手続開始の申し立てができる」と規定しています。

法人が破産する場合は、株式会社なら取締役、合同会社なら業務執行社員に申立て権限が認められています。

 

申立書類も不備なく準備し、提出しないといけません。

「破産申立書」はもちろん、「債権者一覧表」や「財産目録」、「家計収支表」なども作成しておく必要があります。

 

特に重視される資料は債権者一覧表です。
銀行や信金、サラ金などの金融機関からお金を借りている場合、住宅ローンや自動車ローンが残っている場合、家賃や学費、税金、国保などの滞納がある場合などには、そのお金を返さないといけない相手について漏れなく記載しないといけません。友人や家族にお金を借りている場合も同様です。

 

破産費用を予納すること

自己破産をするにも費用がかかります。

 

次に規定されている通り、先払いで対応しないといけないため、破産費用が残っているうちに手続に着手することが大事です。

費用を納めることができない場合、破産手続を進められません。

 

(費用の予納)
第二十二条 破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 破産法第22条第1

 

破産費用には大きく3種類があります。

 

郵便切手代

破産手続に関する事実を債権者に通知するため、郵便切手が必要。

金額は申立て先の地方裁判所により異なるため要確認。数百円~数千円程度になることが多い。

官報公告費用

破産手続に関する事実を公示するため、官報を使って公告される。その掲載に費用かかる。

金額は申立て先の地方裁判所、状況によっても異なる。個人管財事件なら1.5万円ほど、同時廃止事件ならもう少し低額になることもある。

引継予納金

破産者の財産を管理・処分する破産管財人に対する報酬として支払う必要がある。財産の管理権限が破産管財人に引き継がれることから「引継予納金」と呼ばれる。

金額は債権者の数や債務額により異なる。個人の破産なら20万円~30万円で済むことも多いが、債権者数・債務額が多いときは100万円を超えるケースもある。

 

不当な目的による申立てではないこと

破産手続開始の原因があると認められるときでも、前項で説明した通り費用の予納がないときは破産手続を進められません。

また、「不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき」や「申立てが誠実にされたものでないとき」にも破産手続は開始されません。

 

(破産手続開始の決定)
第三十条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をする。
一 破産手続の費用の予納がないとき(第二十三条第一項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。
二 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

引用:e-Gov法令検索 破産法第30条第1

 

例えば、一時的に債権者からの請求を止めたいがために申し立てをしたようなケースがこれに該当します。

 

上述の通り破産手続の申立ては債権者が行うことも可能です。しかし、「債務者を威嚇することで自己の債権を優先的に取り立てようとしている」「いやがらせをしようとしている」「他の債権者との間で進めている私的整理の邪魔をしようとしている」といった場合には、不当目的あるいは不誠実な申立てであるとして破産手続は開始されません。

 

免責手続に関する条件(免責不許可事由について)

続いて免責手続に関する条件についてですが、破産法では免責不許可事由を列挙し、そのいずれにも該当しないときに免責許可の決定をすると規定しています。

 

その免責不許可事由をいくつか紹介していきます。

 

財産を隠していないこと

財産を隠していると、免責を受けられなくなります。

 

債権者に損害を加える意図を持って財産を隠す、または不当に安く売ったりタダで譲渡したりする行為は免責不許可事由として法定されています。

 

自己破産をしようとする数年前にした行為が評価されることもあります。債務の支払いが難しくなっているにもかかわらず、「預貯金を他人の口座に移した」「高額な財産を家族に贈与した」「高級車を知人に安く売った」といった行為をはたらいていると、免責されない可能性がありますので要注意です。

 

不当に債務を負担していないこと

不当な債務を負担していることが原因で免責を受けられなくなることもあります。

 

ヤミ金からの借り入れなど、法外な行為で債務を負った破産者に対して免責許可は下りません。

 

特定の債権者に対して弁済をしていないこと

自己破産をした場合、破産者の財産は換価され、原則として債権者に平等に配当されます。

そのため特定の債権者だけを優遇して先に支払うといった行為は避けないといけません。

 

「家族や友人から借りた分だけ先に返済した」「連帯保証人がついている借金だけ先に返済した」という場合には免責されない可能性がありますので要注意です。

 

ギャンブル等により過大な債務を負っていないこと

射幸性の高い行為で多大な債務を負った場合、免責不許可となる可能性が高くなります。

「パチンコや競馬、競輪などのギャンブルで大きな借金を負った」という事情がその代表例です。

 

ギャンブル以外にも、過剰な贅沢により浪費したときは免責不許可事由に該当する可能性があります。

「普段の給料から見てバランスがあまりに取れていない高級車を購入した」など、自己破産に至った背景についても評価されますので注意しましょう。

 

虚偽に基づいて負った債務ではないこと

借金はしようと思っても簡単にできるものではありません。銀行などからお金を借りるためには、それ相応の信用が必要です。

 

信用できるかどうかは主に年収をチェックすることで審査されます。

嘘をつくことで借り入れはできるかもしれませんが、結局資力不足により返済が滞り、破産に至る可能性もあります。

 

しかしながら、このような背景を持つ破産者だと免責許可は下りにくいです。「名前や収入などを偽ってクレジットカードを作成し、利用していた」「自己破産をするつもりで知人からお金を借りた」といった行為も免責不許可事由に該当します。

 

裁判所に対して虚偽を述べていないこと

自己破産を進める過程で、裁判官や破産管財人と面談する機会もあります。支払不能となった理由や債務の内容など、質問に対して誠実に答えていかないといけません。

 

しかしその場で虚偽を述べたり面談を拒否したりすることで、免責不許可事由に該当してしまうこともあります。嘘をつかず、協力的な態度を取るようにしましょう。

 

7年以内に免責手続を行っていないこと

過去7年以内に免責許可を受けたという経歴があると、免責許可は下りません。

その他民事再生法に基づく所定の法的保護を受けたときにも免責が認められないことがあります。

 

過去に自己破産をしたことがある方は要注意です。

 

自己破産の申立てに不安がある方は弁護士に相談

自己破産は、債務超過で悩む債務者にとっての最終手段です。しかし条件を満たさなければ自己破産をすることすら叶いません。

そこで破産手続や免責手続の申立てを少しでも視野に入れているのであれば、早いうちに弁護士に相談しておくことをおすすめします。

 

弁護士への相談を通じて、破産手続開始決定や免責許可をしてもらうために必要なこと、してはいけないことについてアドバイスが得られるでしょう。

また、弁護士に破産についての依頼をすることで債権者とのやり取りや各種資料の作成についても負担が軽減されます。

早期の相談で、自己破産以外の選択肢を取ることもできるかもしれません。

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志田 一馨弁護士
志田 一馨Kazuyoshi shida

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