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相続税の申告はどんな場合に必要? 判断材料となる基礎控除額や遺産の総額の調べ方について

「相続や遺贈により取得する財産の価額」「法定相続人の人数に対応して定まる基礎控除の額」、主にこの2つの要素から相続税申告の必要性は判断することができます。当記事ではその理由について言及した後、それぞれの価額を調べる方法、ポイントを紹介します。

 

まさに今相続手続が進み始めたという方、相続を意識し始めた方は参考にしていただければと思います。

 

相続税の申告が必要なケース

相続税の申告は、納付する相続税の金額を根拠づける資料として提出します。どのような計算で金額が算定されたのか、申告書の記入欄を埋めていくことで明らかにすることができます。

 

そこで、少なくとも「相続税を納付しないといけない場面」では相続税の申告が必要といえます。

 

これに対し、「相続税を納付しなくていい場面」では、申告が必要なケースと不要なケースに分かれます。納めるべき相続税がないときは基本的に申告も不要なのですが、特定の控除の適用を受けたり、特定の制度を利用したりしているときは、申告が必要になることもあるのです。

 

遺産と基礎控除の額を調べる必要がある

基礎控除は、特別な手続を行うまでもなく、常に適用を受けることができる控除です。遺産の額に基礎控除を適用、控除後の金額が「課税遺産総額」となり、この金額を基に相続税の詳細な計算へと進んでいきます。

 

よって、課税遺産総額が0円であればその時点で納付額は0円となり、相続税の申告も不要です。

 

ただし、課税遺産総額を調べるためには、①遺産の額および②基礎控除の額、の2点を把握できないといけません。

 

遺産の額を調べるときのポイント

まずは「遺産の額」を把握する方法から紹介します。

 

金額を調べるときのポイントは、次の通りです。

  • 相続財産を調査する
  • 相続時精算課税制度に基づく贈与分を把握する
  • 非課税財産を把握する
  • 葬式費用を把握する
  • 相続開始前3年以内の贈与分を把握する

 

相続財産の調査

まずは、相続財産の調査が必要です。被相続人がどれほどの財産を持っていたのか、調べないといけません。

 

調査の基本は「被相続人の自宅の捜索」です。自宅を調べることで、現金や預金通帳、契約書類、金融機関からの郵便物、不動産に関する資料・・その他さまざまな情報を掴むことができます。

 

必要に応じて銀行や証券会社に対して紹介を行い、残高などの証明書を取得しましょう。

 

なお、相続財産はプラスの価値を持つ積極財産に限られません。マイナスの価値を持つ消極財産も相続対象であり、その大きさが相続税の計算にも響いてきます。借金が残っていないかどうか、口座の取引履歴などもチェックしておくことが大事です。

 

相続時精算課税制度に基づく贈与分の把握

相続税の計算に含める財産は、「遺産」と呼ばれる、被相続人が死亡時点で保有していたものに限られません。純粋な、民法上の相続財産のほか、税制上相続財産に含めるものもあります。

 

「相続時精算課税制度に基づく贈与分」もその一例です。

 

生前にすでに贈与しており、すでに被相続人の財産ではなくなっていますが、「相続税の計算をするときにまとめて精算すること」を了承して行った贈与ですので、その分も遺産の額に加えなければなりません。

 

非課税財産の把握

遺産ではあるものの、相続税の計算上、除くことができる財産があります。この「非課税財産」には、次のようなものがあります。

 

  • 墓地
  • 墓石
  • 仏壇
  • 公共団体等に寄付をした財産
  • 非課税枠内の生命保険金や死亡退職金 など

 

原則としてこれらは遺産の額に加えなくてもかまいません。

 

葬式費用の把握

葬式費用は被相続人が亡くなってから生じる支出ですが、相続税の計算上、その費用は遺産の額から差し引くことが認められています。

 

香典返しの分は差し引くことができませんが、火葬や納骨、葬送に要する一般的な費用、お通夜に要する費用、読経料、遺体の捜索にかかった費用などは遺産の額から差し引いてかまいません。

 

相続開始前3年以内の贈与分の把握

相続時精算課税制度によらない、暦年課税制度に基づいて行った贈与分も、一部遺産の額に含めないといけません。

 

これは「生前贈与加算」とも呼ばれるルールです。被相続人が亡くなる前3年以内に行われた生前贈与は、贈与税としての計算ではなく、相続税の課税対象として計算しないといけません。

 

暦年課税制度によれば年間110万円の基礎控除が利用できますので、その額まで非課税で贈与ができます。大金の贈与を非課税にすることはできませんが、相続税について節税ができることは確かです。
しかしながら、贈与の直後に相続が開始されてしまうと、その節税効果もなくなってしまいます。遺産の額として含めなければなりませんので、3年間を遡り、贈与の有無を把握しておかないといけません。

 

基礎控除の額を調べるときのポイント

続いて「基礎控除の額」を把握する方法を紹介します。

 

基礎控除の額は次の計算式を用いて調べることができます。

 

基礎控除の額 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

3,000万円を基準に、法定相続人の数に対応して金額が増します。法定相続人が1人でもいれば3,600万円。法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、4,800万円が基礎控除額となります。

※相続放棄は基礎控除額の計算に影響しない

 

法定相続人をカウントすれば基礎控除の額はすぐ明らかになるのですが、その際、次のポイントを押さえておくことが大事です。

 

  • 養子と実子を分けて考えること
  • 胎児出生のタイミングに注視すること
  • 代襲相続人を調査すること

 

養子と実子を分けて考えること

基礎控除の計算において、養子と実子は異なる扱いを受けます。法定相続分は養子であっても実子と同等の扱いを受けることができるのですが、養子縁組で基礎控除を際限なく増額されることを防ぐため、カウントできる養子の数には制限がかけられています。

 

  • 被相続人に実子がいるときの制限:カウントできる養子は1人まで
  • 被相続人に実子がいないときの制限:カウントできる養子は2人まで

 

仮に、相続人が配偶者と子ども4人(内、3人が養子)であるとすれば、基礎控除の計算においてカウントできる法定相続人の数は3人までです。

 

なお、この制限は養子個人を冷遇しているものではありません。相続税全体の金額を算出するときに影響する事項であり、相続税の負担については養子も実子も平等です。

 

胎児出生のタイミングに注視すること

胎児は基本的に権利能力を持ちませんが、相続税の申告書を提出するまでに生まれた者については、法定相続人としてカウントすることが認められています。相続開始時点で胎児であったとしても問題ありません。

 

相続税の申告期限である「相続から10ヶ月以内」ではなく、「申告書を提出するまで」に出生があったかどうかで判断します。そのため、そろそろ生まれそうだと思われる場合は、申告書の提出を少し待ってみるなどの対応を考えると良いでしょう。

 

代襲相続人を調査すること

相続開始時点で相続人となるはずであった人物が亡くなっていることもあります。例えば被相続人の子どもは第1順位で相続人になることができ、生きていれば親の財産を相続することができます。

 

ただ、先に子どもが亡くなっているというケースもあるでしょう。しかしながら、その子どもに子どもがいるとき、被相続人にとっての孫がいるときは、「代襲相続」が発生します。先に亡くなった子どもの相続権を引き継ぎ、孫が相続人となるのです。このときの孫は「代襲相続人」と呼ばれます。

 

代襲相続が発生すると相続人の数が増えることがあります。先に亡くなった子どもに複数人の子どもがいると、その分数が増えるからです。
基礎控除の計算において、これら代襲相続人の数はすべて含めることが認められています。そのため代襲相続の可能性も考慮し、慎重に相続人の調査を進めなければなりません。

 

相続人の調査、相続財産の調査、相続税の計算などをサポートして欲しいという場合は、法律や税のプロに相談しましょう。弁護士の支援を受けることで、各種相続手続の代行を依頼することができますし、遺産分割協議における相続人間の揉め事にも対処できます。税理士を頼ることで正確に相続税の計算ができるようになるでしょう。また、相続税の申告の必要性についても判断してもらえます。

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志田 一馨弁護士
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