自己破産で免責許可が下りる条件とは|申し立て、不許可事由、取り消し
個人の方が破産をするとき、通常、破産手続と免責手続をセットで行います。免責手続に基づく免責許可を受けることで残った債務を消滅させられるからです。
ただ、免責許可が裁判所から下りると債権者に負担を負わせることになってしまうため、無制限に認めるべきではありません。
ここで免責許可が下りるための条件について言及しています。
免責許可を得るために必要なこと
免責許可により債務を消滅させる上では、次のポイントを押さえておく必要があります。
- 免責許可の申し立てを行うこと
- 法定の免責不許可事由に該当しないこと
- 免責が取り消される行為をしないこと
それぞれ以下で詳しく解説していきます。
条件①免責許可の申し立てをすること
自己破産に関しては「破産法」と呼ばれる法律でルールが定められています。
そして免責許可については次のように、破産手続開始後、免責許可の申し立てができると規定されています。
(免責許可の申立て)
第二百四十八条 個人である債務者・・・は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。
2 前項の債務者・・・は、その責めに帰することができない事由により同項に規定する期間内に免責許可の申立てをすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、当該申立てをすることができる。
免責許可の申し立てがなければ免責許可が下りることもありません。まずはこの形式上の条件を満たす必要があります。
しかしながら、同条第4項には次の規定も置かれています。
債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない。
免責手続が必要だという原則については知っておく必要がありますが、この条文に規定されているように、通常は破産手続の申し立てとともに免責許可の申し立てがあったとみなされます。
なお、この申し立てに際しては「債権者名簿」の提出が義務付けられていますが、こちらにおいても破産手続の申し立て時に適切な「債権者一覧表※」を提出できてれば、その義務を果たすことができます。
※債権者一覧表:自己破産の申立書と一緒に提出する必要書類の1つ。提出が必須で、漏れなく取引のあった債権者の情報を記載しなければならない。
条件②免責不許可事由に該当しないこと
破産法では、「免責許可の決定をすべきかどうかの判断を下すため、破産管財人に特定の事柄を調査させることができる」と規定しています。
調査内容として特に重要なのが「免責不許可事由に該当する事実があるかどうか」です。
※この調査に対し、債務者は協力する義務も課されている。
この免責不許可事由が、免責許可を受ける上でもっとも意識すべき問題といえます。
免責の許可が下りなくなる行為一覧
破産法では、免責不許可事由を列挙し、このいずれにも該当しないなら免責許可の決定をすると定めています。
その事由を参照して、下表にて避けるべき行為をまとめていきます。
財産を隠す | 「債権者を害する目的」をもって、自分の財産を隠したり壊したり、その他不当に財産の価値を下げるような行為は免責不許可事由にあたる。 破産に伴って処分されることを避けるため預金を友人の口座に移す、高額の骨董品を家族に安く売却する、などの行為。 また、業務や財産状況を記した帳簿・書類等を偽造変造したり隠したりする行為も免責不許可事由にあたる。 |
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不当に債務を負担する | 「手続を遅延させる目的」をもって、著しく不利益な条件で債務を負担する行為は免責不許可事由にあたる。ヤミ金からお金を借りるなど真っ当な条件によらず債務を負うと免責許可は下りない。 |
特定の債権者にだけ弁済する | 「特定の債権者に利益を与える、または他の債権者を害する目的」をもって、勝手に特定の債務のみを弁済する行為は免責不許可事由にあたる。 本来債権者は平等に扱うべきところ、家族や友人などを優遇して返済する行為はしてはいけない。 |
ギャンブル等により財産がなくなった | 「浪費や賭博、その他射幸行為により著しく財産が減少した」という事実は免責不許可事由にあたる。 パチンコ、競馬など、ギャンブルで大きな借金を負った場合には要注意。 |
騙して借入をした | 「破産しそうな状況であるにも関わらず、債権者を騙して信用取引で財産を得た」という事実は免責不許可事由にあたる。借入をするときの審査において虚偽を伝えていた場合など。 |
裁判所に対して嘘の情報を伝えた | 裁判所に提出する債権者名簿の内容に虚偽が含まれていたという事実は免責不許可事由にあたる。 また、裁判所のする調査に協力しない、嘘の情報を伝えた、不正の手段によって破産管財人の邪魔をした、という場合も同様。 |
7年以内に免責等の手続をした | 過去に免責許可や民事再生法に基づく再生計画の認可を受けてから7年を経過しない内に、今回免責許可の申し立てを行った。 |
なお、上記免責不許可事由に該当しても免責許可が下りる可能性はまだ残っています。破産法でも次の規定が置かれています。
・・・同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
「同項各号に掲げる事由」とは免責不許可事由のことです。
その他の事情も考慮して免責を許可することが相当と評価されれば、免責許可が下りることはあるということです。
免責許可が下りたあとの取り消しにも注意
ここまでに挙げた条件を満たし免責許可が下りたとしても、事後的にその許可が取り消されることがあります。
(免責取消しの決定)
第二百五十四条 第二百六十五条の罪について破産者に対する有罪の判決が確定したときは、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権で、免責取消しの決定をすることができる。破産者の不正の方法によって免責許可の決定がされた場合において、破産債権者が当該免責許可の決定があった後一年以内に免責取消しの申立てをしたときも、同様とする。
「第二百六十五条の罪」とは「詐欺破産罪」のことです。
詐欺破産罪とは、債権者を害する目的をもって次の行為をし、破産手続開始決定が確定した場合の罪をいいます。
- 財産の隠匿または損壊
- 財産の譲渡または債務の負担の仮装
- 財産の現状を改変し、価格を減損させる
- 債権者にとって不利益な形で、財産を処分または債務を負担する
詐欺破産罪に対しては「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」という刑罰が予定されています。
免責許可が取り消されるだけでなく大きなペナルティを受けることになりますので、不当な行為・違法な行為をすることなく自己破産を進めることが大事です。
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