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破産の申し立てから免責許可決定までの流れ

個人の方が破産をするにはまず地方裁判所へ申し立てを行い、「破産手続開始決定」を受けること、その上で「免責許可決定」を受けなくてはなりません。

 

なかなか一般の方に馴染みがある手続ではありませんので、ここで簡単に全体の流れや必要な期間について紹介いたします。

 

破産の申し立てをする前に検討すること

「借金の返済の困っている」「経済的に苦しくなってきた」などさまざまな事情を抱えて破産を考えている方もいることでしょう。

しかし破産は債務整理の中でももっとも強制力が大きく債務者自身の受ける影響も大きな手続です。

 

「借金をなくすことができるから」と気軽に選択できるものではなく、他の手段だとどうしようもなくなってから破産の道を選ぶのが一般的です。

 

そこで弁護士にも相談して、本当に破産をすべき状況なのかを一度見てもらいましょう。

弁護士に任意整理を頼んで問題を解決できる可能性もありますし、マイホームを残したまま個人再生で解決できる余地も残っているかもしれません。

 

免責許可を受けるまでの流れ

残った債務について免責を受けるまでには、①破産の申し立て、②清算の手続、③債権者への配当、④免責不許可事由の確認などが必要です。

 

破産の申し立て

破産手続を決断した後は、申し立ての準備に取り掛かります。

その間、債権者から取り立てを受ける可能性がありますが、弁護士に受任してもらいその事実を債権者に通知してもらうことで取り立てを止めることができます。

 

また、債権者との連絡窓口、申立書の作成やその他必要書類の準備なども弁護士に任せることができます。

 

なお、厳密にいうと破産手続と免責手続は別の手続ですので申し立ても別となるのですが、破産手続の申し立てをもって免責手続の申し立てをしたものと扱われるため特に意識をする必要はありません。

 

清算手続の開始

破産の申し立てが認められると、裁判所から「破産手続開始決定」を受けることができます。

 

ここからの流れは債務者の財務状況によって次のように大きく異なります。

 

  • 債権者に配当するだけの財産が残っている場合
    • 破産管財人が選任されて、債務者の財産を換価していく。
    • その後滞納している税金などの優先的な債務を弁済し、残りを債権者へと配当していく。
    • 原則は「最後配当」であるが、場合によっては「簡易配当」や「同意配当」と呼ばれる比較的簡単な方法により終結することもある。
  • 債権者に配当するだけの財産が残っていない場合
    • 配当による終結を待たずに手続が廃止される。
    • 破産手続開始決定と同時に終わる「同時廃止」となるケースが大半であるが、清算過程で配当ができないことが発覚して終わる「異時廃止」となることも多い。

 

債権者への配当

同時廃止や異時廃止であれば短期的に手続が終了しますが、配当が可能なケースだと清算手続から配当手続まで進める必要があり、比較的必要な期間も長くなります。

 

同時廃止だとひと月以内に終わることが多く、異時廃止でも半年以内に終わることが多いです。

一方で配当を要する場合は半年以内に終われるケースの方が珍しくほとんどの場合「半年~2年以内」という期間がかかっています。

 

特に原則的方法である「最後配当」となるときは期間が長くなる傾向にあります。

これに対し「簡易配当」や「同意配当」であれば比較的短期的に終えられるでしょう。

 

  • 同意配当:債権者からの同意を得て、簡単な方法で配当を終えることができる。もっとも簡単に、迅速に手続が終結する。
  • 簡易配当:配当可能金額1,000万円未満であるなど特定の条件を満たせば最後配当とは異なる簡単な方法で終結させられる。

 

免責不許可事由の確認

続いて免責についてみていきます。破産手続開始決定を受けることができても、免責されなければ債務は残ったままです。

とはいえ破産者の全員に無条件で免責を認めるべきではなく、特定の場合には「免責不許可」となってしまいます。例えば次のような場合です。

 

《 免責許可が得られないケース 》

 

  • 配当されないよう一部の財産を隠していたことが発覚した
  • ギャンブルで浪費しすぎた
  • 明らかに自らの経済力を超えた浪費を続けていた
  • 友人など特に親しい関係にある債権者にのみ弁済をしていた
  • 裁判所に嘘をついて申し立てをした

 

他にもさまざまなケースで免責不許可となる可能性があります。

しかしながら、免責許可を受けるために特別な条件を満たす必要はなく、「許可すべきではない特別な事情」がなければ基本的に免責許可は受けられます。

 

自己破産してもなくならない債務に注意

免責不許可事由とは別に、債務の性質上、もともと免責が認められないものもあります。

「非免責債権」と呼ばれる債権があり、これに対応する債務は自己破産をしても消滅しません。この点には注意しましょう。

 

いくつかその例を紹介します。

 

免責されない債務の例

未払いの税金

滞納している住民税や固定資産税など。

社会保険料の滞納に関しても同様。

損害賠償義務

過失に基づく損害賠償ではなく、暴行事件や傷害事件など害意をもって不法行為を行い、そこから損害賠償義務が発生したのであれば、免責はされない。

また、害意まではなくても、故意や重過失(ミスの程度がひどいもの。)に基づいて損害が発生したとき、その損害賠償義務は免責されない。

養育費の支払い

親の都合で養育費の支払いを免責すべきではないため、自己破産後も子どもに対して養育費を支払うべき義務は残る。

罰として請求されている金銭の支払い

犯罪により罰金刑を科されている場合や脱税等により追徴金の請求をされている場合、その支払い義務は免責することができない。

 

自己破産の進み方は人によってさまざまです。

同時廃止によってすぐに手続が終わることもあれば、配当手続に期間を要してしまい1年以上かかってしまうこともあります。

 

また、不正をはたらいた方は免責許可が受けられないおそれがありますし、債務の一部について免責が認められず破産後も支払い義務が残ってしまうケースもあります。

 

想像以上に時間がかかったり大変な手間がかかったりすることもあるでしょう。

自己破産は任意整理に比べると法律に基づく厳格な手続ですので、できるだけ債務整理のサポート実績が豊富なプロに任せるようにしましょう。

資格者紹介Staff

志田 一馨弁護士
志田 一馨Kazuyoshi shida

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